アップルは、自社の携帯電話や計算機に人工知能の機能をまとめて組み込む取り組みを進めています。この仕組みは、目新しい機能を一つ追加するというより、これまで使ってきた道具の中に少しずつ知恵を溶け込ませる、という考え方で作られています。何ができて、何に注意すべきかを順に見ていきましょう。
端末の中で処理するという考え方
最大の特徴は、処理をできる限り端末の中で終わらせる設計です。文章を書き直す、通知をまとめるといった作業は、機械の中に収められた小さな仕組みが担当します。手元で完結するため反応が速く、内容が外に出ません。端末だけでは手に負えない複雑な依頼については、同社が用意した専用の計算機に一時的に送りますが、送った情報は保存せず、外部から中身を確認できない作りにしていると説明されています。個人の情報を預けることへの不安に、設計の側から答えようとした形です。
文章と写真まわりでできること
実際に使える機能を見てみましょう。文章の面では、書いた文を丁寧な調子や簡潔な調子に書き直したり、長いやり取りの要点を短くまとめたりできます。届いた知らせを一行に縮めて表示する機能もあり、画面に並ぶ通知を一目で把握できます。校正の役目も果たしてくれるため、急いで書いた文の言い回しを整えるのにも向いています。読み書きの補助という点で、日常の細かな手間を静かに減らす方向に働く機能だと言えるでしょう。
絵や写真に関わる機能もあります。言葉で説明すると挿絵のような絵を作ってくれる仕組み、手描きの落書きを整った絵に直す仕組み、そして写真に写り込んだ不要なものを消す仕組みなどです。自分だけの絵文字を作れる機能もあり、連絡のやり取りに彩りを添えます。ただし、写真そのものを本物と見分けがつかないほど作り変えるような使い方は、意図的に避けられています。
そのほかにも、日常で助かる細かな機能が用意されています。撮りためた写真の中から、言葉で説明するだけで目当ての一枚を探し出す機能。録音した会議の内容を文字にして、要点だけを並べ直す機能。画面に映っている外国語の文章を、その場で読める言葉に置き換える機能。どれも派手さはありませんが、これまで手作業でやっていたことを数秒に縮めてくれます。使い始めは違いに気づきにくく、しばらく経ってから古い機種に戻ったときに、初めてありがたみが分かる種類の機能です。たとえば移動中にPlayBazeのような場所で時間をつぶしながら、届いた連絡の要点だけを拾い読みするといった細切れの使い方でも、こうした機能はよく働いてくれます。
音声の受け答えと使ううえでの注意
音声の受け答えについては、大がかりな作り直しが進められています。会話の前後をつなげて理解すること、画面に表示されている内容を踏まえて答えられるようにすること、そして複数の用事を続けて任せられるようにすることが目標です。ただし、この刷新は当初の予定より時間がかかっており、機能は順を追って提供されています。込み入った調べ物については、外部の高度な仕組みに引き継ぐこともできます。
同じような機能は、他社の製品にも次々と載せられています。その中でアップルが取っている道は、性能を競って一番を目指すというより、日ごろ使う画面のあちこちに機能を分散させ、意識せずに使えるようにするというものです。専用の入口を開いて頼むのではなく、文章を書いている画面や写真を見ている画面の中に、必要な機能がそっと現れる形をとっています。この考え方は分かりやすい半面、どんな機能があるのか気づかないまま使わずに終わる人も出てきます。設定の項目を一度ざっと眺めておくと、思わぬ発見があるかもしれません。
使ううえでの注意点も押さえておきましょう。まず、これらの機能は比較的新しい機種でなければ動きません。処理を手元で行う都合上、相応の性能と記憶容量が必要になるためです。また、言語ごとに対応の進み具合が異なります。そして何より、人工知能が作る文章や答えには誤りが混じることがあり、そのまま信じずに確かめる習慣が欠かせません。まずは気軽な用事から使って慣れていき、仕事の書類など大切な場面では必ず自分の目で確かめる。この使い分けができれば、手元の道具はぐっと頼もしくなります。
